リン・ミンメイから初音ミクへ・・・バーチャルアイドルの系譜



クリプトン・フューチャー・メディアがDTM用音源ソフトとして2007年に発売した『初音ミク』。

PCソフトのマスコットキャラであった初音ミクは今や”バーチャルアイドル”として、絶大な人気を獲得し、2014年現在も、初音ミクの登場するゲームソフトの発売や各種のイベントの予定が続いています。

存在しないのに、確かにそこにいる……バーチャルアイドルと呼ばれる少女たちの系譜を辿ってみましょう。




●コンピュータ時代が生み出した新しいアイドル像

”バーチャルアイドル”という用語と概念が一般に用いられるようになったのは、1990年代以降のことです。

”バーチャルアイドル”の”バーチャル”とは”バーチャルリアリティ(Virtual Reality=仮想現実)”という用語から来ているものです。

バーチャル(Virtual)は本来『実質的な』という意味の単語で、”Virtual Reality”とは、”実質的に現実と感じられる事物や環境を作り出す技術”を指す技術用語でした。しかし、この用語が日本に輸入された際に”仮想現実”と訳されたことから”Virtual=存在しない”とする誤解が広まってしまいました。

『バーチャルアイドル』という言葉も、この”virtual”という単語の誤用から派生したもので、ニュアンスとしては『実在しないアイドル』という意味になります。

すでに1980年代には、実在の人間ではないアニメのキャラなどを実在のアイドルのようなキャラクターとして扱う現象が起きていましたが、90年代に入って『バーチャルアイドル』という用語が普及するようになったのは、パソコンとネットの影響が大きいと言えるでしょう。


●80年代の”元祖バーチャルアイドル”……リン・ミンメイ

前述の通り、『バーチャルアイドル』という言葉が広まり始めたのは1990年代になってのことですが、その萌芽は80年代にすでに見て取ることができます。

1983年に放映されたテレビアニメ『超時空要塞マクロス』の作中に登場するアイドル歌手という設定のヒロインキャラクター、リン・ミンメイが人気を博しました。

劇中でリン・ミンメイが歌った曲がオリコンチャート入りし、彼女(声優ではなく、リン・ミンメイ自身)が出演しているという設定のラジオ番組を模したLPレコードが話題を呼ぶなど、現在のバーチャルアイドルの商業展開によく似た現象が起きています。

この『超時空要塞マクロス』と同じ年に、アイドル歌手の魔法少女という設定のアニメ『魔法の天使クリィミーマミ』も放映されていますが、架空のキャラクターがあたかも現実へ進出するという現象を見せたという意味では、やはりリン・ミンメイがバーチャルアイドルの元祖と言っても過言ではないでしょう。




●ゲームから広がった『バーチャルアイドル』

1993年、ゲームメーカーのコナミが、自社のゲームソフト『ツインビー』シリーズのヒロインキャラクター”パステル”をアイドルとして育て上げようという企画『ウインビー国民的アイドル化計画』(ウインビーは作中でパステルの搭乗する機体の名前)を立ち上げます。『バーチャルアイドル』という用語が企業によって用いられたのは、これは最初であったと言われています。

後に、コナミは同じく同社のゲーム『ときめきメモリアル』のメインヒロイン、藤崎詩織を始めとするキャラクターを歌手としてデビューさせるといった企画を打ち出し、現在のバーチャルアイドルの基礎を築きました。

バーチャルアイドルの普及のきっかけを作ったのがコンピュータゲームであったことには、必然性があると考えられます。

アニメやコミックの登場人物は、あくまで描かれた作品世界の存在であり、視聴者や読者との関係はどこまで言っても一方通行ですが、ゲームはプレイすることでその世界により直接的な関わり方が可能になることから、その登場人物に対してプレイヤーはより近し印象を抱くことができると言えるでしょう。

このことは、後に続く『初音ミク』のブレイクにも同じ事が言えます。


●21世紀のバーチャルアイドル『初音ミク』

パソコンの普及とその高性能化は、バーチャルアイドルの急速な普及に大きく影響します。それまでメディアによって市場に提供されるものであったバーチャルアイドルが、パソコンを使うことによってユーザーが自己制作できるものへ変化したことが大きな理由でしょう。

2007年、クリプトン・フューチャー・メディアから発売されたDTMソフト『初音ミク』がブレイクします。架空の存在である少女『初音ミク』を自在に歌わせることができるというコンセプトが受けたことは確かですが、その人気に大きく影響したのが、動画共有サイト『ニコニコ動画』の存在です。

ニコニコ動画では、それ以前から自作の楽曲を動画にして視聴者と共有する文化がありましたが、『初音ミク』はその恰好の題材として、ユーザーの好評を得ることになります。

自分が作った歌を歌わせることができる……そのことに、架空のキャラである『初音ミク』に対する親近感をより高める効果があったことは想像に難くありません。

更に、同じくニコニコ動画において普及した3DCGソフトウェア『MikuMikuDance』も、重要な役割を果たしていると言えるでしょう。CGの3Dキャラを自在に動かすことのできるこのソフトには、デフォルトで『初音ミク』を始めとするVOCALOIDキャラのモデルが用意されており、それを使って自在にアニメーションを作成することが可能です。

それまでイメージに過ぎなかったバーチャルアイドルが、PCという活躍の場を得て、自在に、そして思い通りに歌い踊るキャラになることで、それ以前のキャラクターにはあり得なかったユーザーとの親密感を獲得したと言えるでしょう。




■おわりに

パソコンの性能が日進月歩で進んでいる現代、これからますますリアルに近いバーチャルアイドルキャラクターが登場してくることになるでしょう。

どんなアイドルが生まれてくるか、とても楽しみですね。

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