大洪水発生!そんな時に衝撃の方法で洪水を切り抜けるアリ達がいた!
人類の歴史上、洪水は常に為政者の頭を悩ませてきた重要な問題でした。 まして、人間より小さなアリたちにとって水の脅威は比較にならない程大きいわけですが、中にはあっと驚くような方法で洪水に立ち向かうアリもいるようです。
■全員でイカダになって洪水を乗り切るアリ
人間の場合、洪水に対しては放水路や遊水地を作って余分な水を逃したり、土のうや堤防を築いて押し寄せてくる水を防ごうとします。 しかし人間より遥かに小さいアリに同じことはできません。洪水の濁流に巣が襲われれば、一気に押し流されてしまう運命にあります。 しかしアリの仲間の中には、驚くべき方法でこの困難を乗り切るものも存在します。それは、小さなアリたちが集まって”手”をつなぎ、大きなイカダを作り上げて身の上に浮くという方法です。 アメリカやアジア、オーストラリアに分布するヒアリと呼ばれる種類のアリは、イカダを作って洪水をしのぐ習性を持つアリの仲間の一種です。 ヒアリは大雨など水害の予兆を感知すると、巣の中にある卵をすべて集めて地上に運び出します。 そして洪水が襲ってきたら群れの全員が”手”を取り合い、それ全体がひとつのイカダのような状態になって水に浮かびます。 アメリカのジョージア工科大学の研究者はこのヒアリの習性に興味を抱き、集めたヒアリを水の中に投じてその様子を観察しました。 水に落とされたアリ達は互いに手を組み合い、わずか2分程度で水に浮かぶ構造体を形成したそうです。 アリ同士が立体的に組み合った状態になるので、当然、水面下に没する個体もある程度の数になりますが、面白いことに彼らが溺れてしまうことはありません。 ヒアリの身体には細かい体毛が生えており、その個体同士が密接して組み合うことで”アリのイカダ”に空気の皮膜のような層ができるのです。 この空気の層はイカダ全体の浮力を維持すると同時に、水面下になる個体の呼吸を助ける効果もあるということです。 ヒアリはこの状態で、数週間水の上に浮かんだまま生きることが可能です。
■幼虫とさなぎが浮き輪代わりに?
ヒアリとはまた違った方法で”イカダ”を組むアリも存在しています。スイスに生息するヤマアリ属のアリも、ヒアリ同様イカダを組むことで知られています。 このアリの生息域は氾濫原に当たるため、しばしば洪水の被害を受けるためにイカダを組む習性が発達したと考えられます。 最新の研究の結果、意外なことが分かりました。このアリがイカダの浮力を上げるために使うのはなんと幼虫です。 イカダの底部に当たる部分に幼虫そしてサナギを配置し、その上に働きアリが乗る形で、最も守らなければいけない女王アリはイカダの中央部に配置されます。 元々研究者たちは、アリが自分たちのコロニー(巣)を維持するために女王と同様に幼虫を保護するであろうと考えていました。ですから、この結果は彼らに取って意外なものだったのです。 なぜヤマアリは幼虫やサナギをイカダの底部に配置するのか・・・研究を続けた結果、幼虫やサナギは成虫よりも水に浮きやすくまた生命力も高いため、イカダの底部に配置しても死ににくいということが判明しました。 もし幼虫やサナギがいなかったとすると、働きアリの1/4から1/2程度が水中に没することになり、水がひいて巣が再建できる状態になった時には甚大な被害が生じている恐れがあります。 また成虫は幼虫に比べて身体ダメージの回復力が低く、水でダメージを受けた成虫が多いとそれだけ巣の再建に時間がかかることにもなります。 幼虫をイカダの底部に配置するのは一見残酷なようにも見えますが、実は最も合理的な生存手段だったのです。
■おわりに
みんなで手を組んで難局に立ち向かう・・・なんだか人間社会を見ているような気がします。 アリの社会も大変そうですね。