垂れ流しが当たり前!乗り物のトイレの発展秘話



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遠い所へ旅行するなら、まず大抵は列車や旅客機などの乗り物に頼ることになります。

数時間から場合によっては十時間以上、乗り物の中で過ごすこともさして珍しいことではありません。

そうなると、どうしてもお世話にならずにいられないのがトイレでしょう。

今ではどんな乗り物にも大抵はトイレが備え付けられており、清潔かつ快適に利用できますが、昔は色々と苦労があったようです。




■乗り物のトイレの問題点とは?

乗り物に設置されるトイレには、通常の家屋等の建物に設置されるものにはない問題点があります。

それは、設置できるスペースが狭いということです。

通常の家屋のトイレであれば、地下に浄化槽を埋設してそこに排泄物を蓄積したり、配管で下水に直接流すことができます。

しかし乗り物の場合、それ自体が閉鎖的空間であり、なおかつ設備部分を含めたトイレ全体を設置するためのスペースがとても限定されています。

短距離の旅客運送を目的とするものであれば話は別ですが、長距離間の旅客運送に用いられる乗り物の場合、トイレの設置は必須要項とも言えます。

このため、昔の特急列車や飛行機のトイレは、基本的には垂れ流し式でした。


■鉄道列車の場合

1872年10月に新橋=横浜間で日本初の鉄道が開業してからしばらくの間、日本の鉄道にはトイレ付き客車が存在しませんでした。

小用に耐え切れなくなった乗客が窓から放尿してしまい、罰金を徴収されたという話が戯歌として流布されることもあったそうです。

日本の鉄道に本格的にトイレが設けられるようになったのは、1888年に山陽鉄道が英国製の客車を導入してからでした。

当時の鉄道のトイレは、汚物をそのまま車外へ放出する垂れ流し式でした。

走行中は汚物が飛散し形を残しませんが、停車中はそのままその場に残ってしまうため、『停車中の便所の使用はお止めください』という警告がトイレのドアに貼られていました。

汚物を車両に取り付けられた汚物槽に貯留する方式が日本の鉄道に取り入れられたのは1958年でした。

しかし路線によってはそれ以降も垂れ流し式が使用され、JRグループが垂れ流し式の列車便所を全廃したのは2002年のことです。

大井川鐵道では、今だに垂れ流し式トイレが設置された車両は運行しています。




■旅客機や船の場合は?

1919年、欧州で退役した軍用機を用いて開始されたのが旅客機の歴史の始まりでしたが、トイレは長らく垂れ流し形式のものが用いられていました。

これは、高い上空で排泄物を機外に放出した場合、気流や気圧、気温の関係で霧状に粉砕されるため、機内に貯めこんでおくよりも効率が良かったことに依ります。

しかし近年では、汚物タンクを装備する旅客機が普及しており、汚物をそのまま機外へ放出するようなことはなくなりました。

ちなみに、高度が高くなるほど気圧が低くなることはご存知かと思いますが、旅客機の客席は乗客が地上と同じコンディションで過ごせるよう、常に1気圧に加圧されています。

飛行機内のトイレは、この機体の内外の気圧差を利用する仕組みになっています。

トイレの配管はそのまま機外へと繋がっており、使用後にこの管のバルブを開くことで、気圧の高い機内から気圧の低い機外へと空気の流れを発生させます。

これによって排泄物を押し流し、水の使用を控えているわけです。(排泄物は汚物タンクにキャッチされます)

海上を行く旅客船の場合、実は現在も多くの船が垂れ流し形式を取っています。周

囲に海水があるのですから、水洗用の水には困りません。

また、船外に放出された排泄物は、そのままプランクトン等の海洋生物が分解処理してくれる事から、地上や空中のように処理に困ることはないというわけです。


■宇宙空間ではどうなっている?

宇宙開発の初期、まだ人間がようやく衛星軌道に上がれるようになったばかりの時代には、そもそも宇宙船にトイレを付けるという発想自体が存在しませんでした。

宇宙空間での滞在時間がごく短かったことや、そもそもトイレのような重量のあるものを搭載する余地がなかったからです。

どうしても用を足したくなった場合は、宇宙服の中に垂れ流していたそうです。

現在の国際宇宙ステーションでは、宇宙への滞在時間は数ヶ月を超えることになりますので、当然トイレは必須です。

宇宙空間で用を足すには、地球上では考えられない問題が生じます。それは無重力状態であるということ。

地上と同じ構造のトイレだと、排泄物がそのまま宙を漂うようなことにもなりかねません。

その問題を解消するため、宇宙空間のトイレには掃除機に似た吸引機能が備わっています。排泄物を吸引し、宙に漂ってしまうようなことがない構造になっているのです。

ちなみに排泄物は、小便の場合は濾過を行って乗組員の生活用水として再利用されます。

大便は、地上から物資を運搬してきた宇宙船に乗せて大気圏に再突入させ、そのまま燃やし尽くしてしまうとのことです。




■おわりに

たかがトイレ、されどトイレ・・・

現代のような快適な旅行ができるようになるまでは、色々苦労もあったんですね。
 

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